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Innocent Grey 10th Anniversary「神曲」

コンサートの幕間での上映と物販のプレミアムボックスDVDでしか見ることが出来ない貴重映像(2016年現在)なので ご存知無い方も多いと思いますがイノグレ7作品、そしてOP、EDムービーの合わせて9本で 一揃いになる大作です。内容はそれぞれの作品の重要キャラクターの語りをテロップ表示しながら、 真相やキャラクターの心理を深く掘り下げるネタバレ満載のムービー。 そしてこれを導入にステージが展開されますので責任重大な大役でした。 今回の特集はこのプロジェクトの舞台裏を少し振り返ってみましょう。


癸乙夜
1連の作品を1つのスタイルで作ることになるので何本か仕上げた時にやっぱり違う雰囲気に すればよかったとか言えない状況。そして、ボイスに沿って制作するもののプレイ済みの皆さんに 応えるには作品内容やキャラクターの心理をより深く知って考察しなければ相応しいシーンが作れないため OPムービーの制作とは大分異なりました。OPムービーは完成品が存在しないため、 そこまでの掘り下げは出来ないし不要なのです。


資料にも演出や構想のアイディアのメモがびっしりとあります。


1、嫉妬

最初に取り掛かったカルタグラがその後の雛形になりましたが、 映画の字幕っぽくしようとした形跡や線画を廃したスタイルなどまだ完全には固まりきってない所もあります。 イノグレ作品ではよく使うシルエットも今回は肌のベースを黒に設定。 最後のシーンだけは表情を見せることでよりそれを際立たせるようにするフォーマットをこの段階で確立しました。

更にどのくらいの密度でシーンを作ればいいのかも全体予算やト書きの量などから検討して模索しなければなりません。 一番時間の掛かったムービーだったりします。



2、怠惰

降りだした雨を避けるためカデンツァ(BAR)で雨宿りをした人間のストーリー、 そして事件は終わりそれぞれの道へ発って行く。 そんなイメージもOP以上に象徴的に描けたのではないかと思います。 映像の制作はノウハウや技術も然ることながら、時間軸でどんな展開をイメージするかを 考えるのも重要なお仕事なのです。

この作品、降りだした雨は最後に晴らせる演出を入れるか迷いましたが、そんなにスッキリと終わらせるべきではないと いう思いからカットしました。結末を知っている皆さんにとってはいかがでしたでしょうか?



3、貪欲

殻ノ少女は今も続くシリーズで私にとっても大きな分岐点になった作品。 ムービーの前半では小鳥のように時坂さんの後を付いて行くイメージだったのが、 後半で追いつけない自分が何者だったのか気づいてモチーフが変わっていくのがお分かり頂けましたでしょうか? このムービーだけは途中で冬子の表情が見えるシーンがありますが、それは最後のシーンだけではあまりに辛かったからなのです。

   

本作は全てすごいモーショングラフィックスを作っているわけではないのですが、 その分雰囲気作りのためにテクスチャやモチーフなどもたくさん用意しました。 血液の染みなんかも殆どは血で実際に作っていたり。



4、憤怒

当時のCMムービーも同じ「七憑きの呪い」で進むため、シーンの差別化を計っています。 また事実描写が多く、且つ語り部の紅緒が、他のキャラクターのことを語っているため、 ビジュアルの中心も決めづらくムービー屋泣かせの内容でしたね。 全作の中でも一番「探偵VS犯人」の対決っぽい雰囲気に仕上がりました。

今作では雨や雪の降っている表現がとても多いですがその表現もタイトルごとに意識して変えています。 カルタグラは降り始めた雪、ピアニッシモは叩きつける雨、 殻ノ少女は温もりのある雪、クロウカシスは凍える吹雪、FLOWERSは恵みの雨。…etc



5、暴食

シリーズの大ヒロイン朽木冬子、そして2ndオープニングの砂月のせいで印象が薄めだった色んな意味で悲劇のヒロイン茅原雪子に ようやく陽が当りました。OPムービーの丸い穴は「虚」から呪いや死が吹き出すというイメージだったのですが、 雪子そのものでもありましたね。

「あなたになりたい」と何度も呟く雪子の渇望は、深い水の底で光と酸素を求めて溺れているようで 本編にはまったく水のイメージがないのですが敢えて水底の表現にしてみました。きっと彼女が最後に求めた紫ちゃんの存在はまさに光だったのでしょう。 ムービーの最後の方でその対比が分かるようになっています。

技術的に難しいことは殆ど使っていませんが今回の制作はライトレイヤーやオーバーレイの効果を多様して絵が浮かないように 全体を揃えています。時には効果が厚くなり、暗くなったり色が飛んでしまったりするのでそこをトーンカーブやカラーバランスで 調整しています。場合によっては効果を除外するためにトラックマットを使ったりも。 モノトーンに近いですが色相は豊富で中々渋い映像になりましたね。



6、愛欲

一般作なのに章タイトルが一番えっち(笑)
毛色が大分違うFLOWERSですが、 この作品の最大のネックはBGM尺とボイス尺が合ってないこと。 ボイスは全て収録した物をムービー用の間を考えて私が配置しているのですが 収録したデータで既にBGM尺を超えてました。BGMを変更する提案も頂いたのですが、このムービーには一番ぴったりで どうしても変更したくなかったため、ボイスを少しずつ詰め、タイトルシーンの尺を削り、 環境音の余韻を付けたりして何とか綺麗な形に。そのためシーンが少し急がしく、その後苦労する事になります(笑)

また、タイトルに合わせてこのムービーは少しだけ緑にカラーを寄せています。



7、高慢

最新作「天ノ少女」発表。昨年やった原画展にも行かれた方は、 あの絵の並びにちょっと感慨深かったのではないでしょうか?実は原画展初日に作ったシーンです。 本当は別のセリフ、別のシーンがあったのですが、 あまりに真相に近づきすぎてしまって…消されたのです!(笑)

またこちらはベースを少し青に寄せています。なんでかはファンにはお分かりですよね。 全てのバトンを受け渡すような繋がりで最終作へと向かうのです。



8、序章/9、終章

向かえた11月末、プレスも考えると後が無い時期に差し掛かっていましたが、 0から素材を起こしても間に合う素材点数、そして神曲というタイトルに相応しい演出ということで このアイディアを形に起こして頂きました。 歩き続ける少女は正にInnocentGreyそのものの象徴であり、 大罪の迷路を抜け、そして天獄まで階段をあがって行く演出は10年間のこれまでの軌跡と これからの往く道を示しています。

歩行はパペットツールを使用していますが、ボーンのようにしっかりとした骨格を作るには不向きなツールなので 調整はしずらいものでした。やはり膝を適度に隠せるワンピースにしていただいて良かった。でも、ちょっとシースルーにしたんですよ?






現在は既に入手困難なプレミアムBOX
あの日の達成感に浸れる最高の作品になりました。



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